教材作成事業

教材作成事業の風景

リーディングス Asian Families and Intimacies 国際共同編集

グローバルCOE「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」(2008~2012年、拠点代表:落合恵美子)が「アジア地域における国際共同研究実施のための共通基盤形成」というミッションを掲げ、その第一層をなす「アジア各国のそれぞれの言語で出版・発表された重要業績の収集・翻訳・共有」のために開始したプロジェクト。アジアの研究者たちの多くは主に英語圏で出版された文献を通して隣国の社会について学ぶというのが常であったが、弊害の多い迂回したコミュニケーションを避け、隣人から直接に学ぶために企画されたのがこのプロジェクトである。アジアにおける重要概念である「家族」とそれに関係する「親密性」について、リーディングス「アジアの家族と親密性(Asian Families and Intimacies)」の刊行を企画し、アジアの9社会(日本、韓国、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、インド)を代表する研究者が構成する国際編集委員会のもと、各国の多くの若手研究者が参加して、収録論文の確定し、英訳および日本語訳を進めてきた。

その成果として、2021年3月にSage社より、Asian Families and Intimaciesを刊行した。
Asian Families and Intimacies | SAGE Publications Ltd

本書は、アジアの著者たちがアジアの家族と親密性について論じた重要かつ影響力のある論考を、全4巻に収めるコレクションである。編者の落合恵美子(京都大学教授)、パトリシア・ウベロイ(中国研究所所長)のもと、アジアの9社会の代表的研究者が国際編集委員会を構成し、すでに「古典」とみなされている有名論文から、新しい現象を扱う新しい学問領域を開拓する現代的な著作まで、アジア各国の著名な研究者や書き手による論考56章を、精選し収録した。収録論文の多くはアジアのさまざまな言語からはじめて英訳されたものであり、欧米圏のアジア研究とは一味違う、アジアに育ったアジア研究を直接に知ることができるように構成されている。

本書は「家族イデオロギー」「家父長制」「セクシュアリティ」「結婚」「ケアレジーム」「ジェンダー」の全6部で構成されている。収録論文は、歴史と現代、理念と現実、異なる社会階層間の家族実践の違いなど、親密性の諸相にさまざまな角度から光を当てている。また、親密な関係のみでなく、私的領域と公的領域の相互作用を扱う章も多く含むのが特徴と言える。「中国化」「インド化」「イスラム化」「近代化」「グローバル化」という多様な文明化の交錯についても論じている。担当編者によって書き下ろされた各部のイントロダクションでは、収録論文で扱われるテーマを、より広い知的・社会的コンテクストに位置づけて再論している。

また、2022年2月には有斐閣より、『リーディングス アジアの家族と親密圏 全3巻』を刊行した。
リーディングス アジアの家族と親密圏 第1巻「家族イデオロギー」
リーディングス アジアの家族と親密圏 第2巻「結婚とケア」
リーディングス アジアの家族と親密圏 第3巻「セクシュアリティとジェンダー」

本書は、2021年3月にSage社より刊行したAsian Families and Intimaciesの日本語版として英語版と並行して準備を行ってきた。本書はアジアの著者たちがアジアの家族と親密性について論じた重要かつ影響力のある論考を、全3巻に収めるコレクションである。編者の落合恵美子(京都大学教授)、平井晶子(神戸大学教授)、森本一彦(高野山大学教授)のもと、アジアの9社会(日本、韓国、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、インド)の貴重な論文を精選した。
本書は「家族イデオロギー」「結婚とケア」「セクシュアリティとジェンダー」の全3巻で構成されている。第1巻では各国の家族が国家の統制により創られた過程を、親族構造や家父長制、儒教化などの文明化、近代化を通して明らかにし、第2巻では、近代初頭の西欧的結婚観のインパクト、地域の伝統に根ざした結婚、子育ての多様さや困難さ、介護をめぐる感情と現実等について論じる。また、第3巻はアジアのセクシュアリティとジェンダーのあり方を鍵として、東アジアと南アジアを中心とする父系的社会と、東南アジアから日本・韓国までの双系的社会という2つの社会を区別し、それに文明化と近代化が重なる,アジアの重層的多様性を明らかにする。