2013年09月12日

【お知らせ】アジア経済発展論研究会(9/17)

アジア経済発展論研究会(東南アジア研究所、経済学研究科、アジア研究教育ユニット共催)

 

9月定例研究会

日時:2013年9月17日(火) 17:00-18:30

報告者:有本 寛 氏(アジア経済研究所 開発研究センター 研究員)

論題:「農産物市場を創る:近代日本コメ市場の米穀検査と規格化」

場所: 吉田中央構内 法経東館1F 106演習室(地図5番のビル)

言語:日本語

報告要旨:

農産物を円滑に流通させるには,容量・俵装・品質等に関する規格化と検査制度が必要である.明治から昭和にかけての近代日本のコメ市場は,中央政府の介入がないなかで,各産地のイニシアティブによって米穀検査が自然発生的に定着した.本報告では,この歴史的経過をレビューし,市場が自律分権的に秩序を得たメカニズムを検討したい.さらに,このメカニズムの応用可能性を考察する.

本報告では,米穀検査が自律分権的に制度化した理由を4つ提示する.第1は,産地間競争によって,各県が県営検査をドミノ式に導入したこと,第2は,コメ市場では地域を単位とした「声価」(=評判)が立っていたため,各産地には自発的な産米改良のインセンティブがあり,実際に県営検査は米価を高める効果があったこと,第3は,各産地には,産米改良を実施できるだけの制度的,行政的な能力があったこと,第4は,消費地の問屋が取引毎の現物検査が行えず,産地に産米改良という抜本的な対策を要請せざるを得なかったこと,である.

近代日本の事例は,中央政府の介入がなくとも,効率的な農産物市場が創られる可能性を示唆しているが,このモデルを今日の途上国にそのまま適用するのは難しいだろう.地方政府に高い行政・執行能力が求められること,規格や検査体制は各地域が個別に設定するのではなく,全国的に統一した方が取引効率が良いことがその理由である.したがって,規格や検査体制は,中央政府が統一的に設定し,検査の実施は地方政府に委譲したうえで,一部の地方を支援するなどして,市場での産地間競争を刺激し,各地域の取り組みを促進する戦略が考えられる.

 

研究会幹事:

東南アジア研究所 三重野(mieno-lab★cseas.kyoto-u.ac.jp ★→@)

Tel: 075-753-7311

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