2015年度アジア研究教育ユニット第2回学際融合コロキアム

2015年度アジア研究教育ユニット第2回学際融合コロキアムの風景

 

報告者:茶園敏美(KUASU研究員)
            稲石奈津子(本部機内(文系)URA室リサーチ・アドミニストレーター)
発表題目: 大改造ビフォア・アフター科研費バージョン-基盤Cを中心に-科研費申請のポイント
場所:文学部新館2階第4講義室
参加者:18名
日時: 2015年7月9日 13:00~15:00

科研費などの競争的資金は研究者にとってライフラインであり、またキャリア構築に大きく貢献するが、成功するためには多くの時間と労力を費やし光り輝く申請書を作成しなくてはならない。そこで第二回コロキアムでは特別セミナーとして、学術研究支援室(URA室)の稲石奈津子氏と、URA(University Research Administrator)サポートを受けて科研費基盤研究Cに採択された茶園敏美氏に、どのような点に気をつけて申請書を作成すればよいのかを解説していただいた。

茶園氏は科研費基盤研究Cの申請書(戦後沖縄における性病対策についての研究)を作成するにあたってURAから添削を三度受け、修正前と修正後のバージョンを挙げて具体的にどの部分がどのように不充分であり、それに対してどのような修正を加えたのか説明してくれた。URAからのコメントによると、申請者の修正前の資料を開示してもらって説明をする機会は少ないため、非常に有益とのことであった。修正箇所で茶園氏が特に強調していたのは具体性と可読性だった。研究の学術的意義について「○○研究に寄与する」と書かれることは多く、茶園氏も修正前は「ジェンダー研究に大きく寄与する」としていたが、URAによると、より具体的な寄与の例をあげることが必要である。そこで茶園氏は「女性の尊厳」に焦点をあて、現実的な例を挙げて修正した。単に自分の研究分野やその周辺分野を列挙するだけでなく、研究意義の具体例をだすことは申請書を際立たせるのに必要であると考えられる。

稲石氏の発表では、申請者が誤解しやすい点に焦点を当てて効果的な科研費申請のポイントが説明された。見落としがちな項目などを一つ一つ解説されたが、特に誤解が多いと感じられた点は、図は必ずしも有効ではないということであった。よく可読性と理解向上のために図を入れることが推奨されるが、特に人文系の申請書の場合は文章で上手く説明できないことを図ではぐらかしているように審査員に判断されることもある。優れた申請書を作成するためには、文字で説明し辛い部分を図式化するよりも、各説明箇所に文章的明確さと図式的可視性のどちらがより必要なのかを判断しながら表現方法を決めることが重要と考えられる。

セミナーにはアジア研究教育ユニット研究員だけでなく、URA室や白眉センターからも参加者があり、多様な質問とコメントが寄せられた。グローバルな視野の必要性などの包括的な質問から旅費明細に記載した学会への参加遂行義務などの細かいものまで多岐に渡って質問があった。

文責: 林 樹(アジア研究教育ユニット、研究員)