2016年度アジア研究教育ユニット第2回学際融合コロキアム

2016年度アジア研究教育ユニット第2回学際融合コロキアムの風景

日時:2016年7月21日(木)13:00-15:00
場所:文学部棟第6教室
参加者:10名弱

第1報告 茶園敏美 KUASU研究員
「文系研究者向け大改造ビフォア・アフタ—科研費バージョン基盤Cを中心に—」

報告者である茶園氏が、昨年実際に科研費基盤Cに申請し採択された経験をもとに、申請書作成のさいのポイントを報告した。報告者は科研費申請にあたって京都大学URAを利用し、京都大学名誉教授やURAスタッフによる申請書チェックとアドバイスを受けたという。報告では、チェックポイントとアドバイスの内容、それを受けて報告者が申請書をどのように修正したかを、自身の申請書を用いつつ、具体例とともに詳しく解説してくれた。

報告者によれば、まず、科研費申請書作成のさいの基本は、可読性と理解容易性を確保することである。そのためのテクニックとして、「文字の大きさはデフォルトが10.5ポイントのところを11ポイントとする」「ゴシック体で強調する箇所が多いとかえって読みにくいので、基本は明朝体を使用し、ゴシック体は見出しや箇条書きに限定する」などがある。

そのうえで、報告者が名誉教授やURAスタッフから受けた主要な指摘として、次の点があった。第一に、「研究目的を達成するために研究計画は十分に練られているものになっているか」である。“研究目的”欄に書くべきことと“研究計画・方法”欄に書くべきこととの混同は、文系申請者によく見受けられるミスであり、研究目的が“研究計画・方法”欄でも繰り返されているという印象は避けなければならない。第二に、研究課題の波及効果および普遍性については「科学技術・産業・文化など、幅広い意味で社会に与えるインパクト・貢献を期待できるか」という観点から、“研究目的”欄や“研究成果を社会・国民に発信する方法”欄といった適切な欄に、具体的かつわかりやすく書く必要がある。そのさい、研究成果を国民に発信する方法としては、「日本の一般市民にたいしてどのように発信できるか」という観点から、一般メディアへの寄稿や京大アカデミックデイの利用といった方法が考えられる。第三に、研究経費の計画・妥当性にかんする指摘である。外国旅費が多い年度になるのか、もしくは国内旅費が多い年度になるのかなど、年度ごとにメリハリをつけて記入することによって、研究計画が具体的かつ十分に立てられているという印象を与えることができる。

第二報告 稲石奈津子 URAリサーチ・アドミニストレーター
「科研費申請のポイント文系バージョン」

報告者は、URA室で科研費申請を援助してきた立場から、とくに若手の文系研究者が留意したほうがよい点を中心に、科研費申請のポイントを解説した。

まず、科研費申請にあたって考えなければならないのは、どの研究種目で申請するかである。若手の申請先として多いのは、若手研究(B)と基盤研究(C)である。ふたつの研究種目の採択率は変わらないが、人文系の場合は基盤(C)にベテラン研究者も多く申請するため、注意が必要となる。また、どの分野・分科・細目で申請するかも考えなければならない。この点について迷った場合には、前回の審査員の顔ぶれを学術振興会HPで確認するという方法をとれる。

次に、申請書を執筆するにあたってのポイントには、以下のようなものがある。「必ず注意書きに沿って記載する」「項目漏れがないか確認する」「最初の4ページが重要であり、とくにタイトルと“研究目的”欄の概要で研究内容のあらましが伝わるようにする」「研究目的をアピールするために、申請書にストーリー性を持たせ、自分の研究によってどのような課題が解決し、なにがどのように進展するのかを、読み手に印象づける」「可読性を高めるために、専門用語の使い過ぎや長すぎる文章には気をつけ、レイアウトも見出しをつけたり改行を入れたりするなどして見やすくする」などである。

科研費の審査は同分野の研究者が審査員を務めるピアレビューであることを頭に留めておく必要がある。このことは具体的には、同分野の研究者がとくに関心を持つであろう“研究目的”欄や“研究計画・方法”欄の内容をより重視する、図を入れるかどうかについては、専門によっては「文章で全てを表現できるほうが望ましい」と審査員が判断する場合もあるので、周囲の意見を聞いてみるといったことにつながる。

 2つの報告のあとに設けられた質疑応答の時間では、科研費の審査員が交替する頻度やURAによる科研費申請支援の内容について、フロアから質問が出た。