2015年度アジア研究教育ユニット第5回学際融合コロキアム

2015年度アジア研究教育ユニット第5回学際融合コロキアムの風景

「報告」アジア研究教育ユニット 学際融合コロキアム第5回

報告者:知足章宏(KUASU研究員)
発表題目:環境汚染をめぐる格差と矛盾――中国の実態から見えるもの」
場所:KUASU多目的室
参加者:6名
日時: 2015年10月1日 15:00~17:00

 知足氏は、本報告において、急激な発展を遂げる中国の「いびつな経済成長」をめぐるパラドックスが発生する、国際社会におけるダイナミクス――政治・経済・環境問題――を明らかにした。先進国は中国の環境汚染に対する姿勢や経済施策に対し、批判的な態度をとりながらも、それらを黙認するかのごとく中国の経済成長に依存せざるをえないというパラドックスである。中国の環境汚染問題は、汚染されている村におけるローカルな問題でも中国という一国の問題でもなく、グローバルシステムによって日本や欧州系他国企業とも密接に結びついている問題なのである。

具体的には、環境汚染の改善を阻害する要因として、経済成長を追い求める社会のあり方と、「人権」に対する価値観の相異などが浮き彫りにされた。中国において行ったフィールド調査時の写真やデータ、その他メディア(中国で発行されている雑誌や新聞記事やテレビニュース)を多く紹介しながら行われ、多角的視点から中国における環境問題報道のあり方が明らかにされた。なかでも、中国の環境NGO(曙光)が作成した映像資料については、オーディエンスから様々な質問が寄せられた。中には目を伏せたくなるような凄惨な現状を明らかにする資料も含まれ、一般的な報道では知りえない中国の現状が明らかにされた。

知足氏は調査方法についても開示し、国外調査、得に中国という社会主義国でインフォーマントを探し、聞き取り調査やフィールド調査を行う困難さについて述べた。調査情報の収集の方法、詳細は省くが特異な面会方法に話が及ぶと、他の研究員から感嘆の声や驚愕の声が上がった。

最後に、今年7月に出版された著書『中国環境汚染の政治経済学』も紹介された。出版に至った経緯など、他研究員にも参考になる情報が共有された。

質問やコメントなどが終始活発に交わされ、中国の法律を専門とする研究者である朴氏も参加されていたため、建設的な意見交換の場となった。また、領域の異なる研究者からも、異なった視点から質問が寄せられ、有意義なコロキアムが形成された。

(文責 入江恵子)

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